マレーシアの新商標法

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2019年商標法草案に関する最近のマレーシアの改正の記事に続き、2019年7月2日の第2読会を経て、待望の草案が通過しました。

本記事では、この法律における重要な変更点(実体面および手続面)をクローズアップし、まもなく発効するこの商標保護の新体制にクライアント様が対応できるよう、サポートを提供します。

  • マドリッド協定議定書への加盟及び多区分出願

現在、海外で商標登録を受けようとする場合、商標保護が必要な国それぞれで別々に商標登録を受けなければなりません。しかし、本新法により、マドリッド協定議定書の規定をマレーシアにおいて実効する規則を作る法的権限が大臣に与えられ、これによって、ひとつの出願を1言語で行い、手数料を一度支払えば最大120ヶ国において商標登録を受けることが可能となります。

商標出願人がひとつの出願で複数の国際分類の商品および/または役務を指定して出願することができる多区分商標登録出願が利用可能になります。

  • 非伝統的商標の認識

新法下では、登録可能な商標の範囲が、色彩、音、香り、ホログラム、位置、商品の形状もしくは商品の包装、動きの順番、またはそれらいずれかの組み合わせなど、非伝統的商標を含むように拡大されました。ただし、商標をグラフィックスによって表すことが可能であり、出願人の商品または役務を他者の商品または役務と区別することが可能であるという、登録可能性に関する通常の審査を満たすことが出来るという条件を満たす必要があります。

  • 出願日

必須の方式要件を満たした後にのみ出願日が記録されます。従って、ローマ字、国語もしくは英語でない商標については、早期の出願日を得るために商標の証明書付き翻訳および音訳を添付することを推奨します。

  • 審査手続

実体審査は、絶対的拒絶理由(例えば、商標に識別性がない、商標が取引において商品及び役務の特性を指定するために使用され得る符号または表示のみからなる)と相対的拒絶理由(すなわち、商標が以前からある商標と同一である)の両方に基づいて行われます。

新法は、以前から存在する係争商標権の、商標権者の同意に基づく使用も認識しますが、登録官は、公益および混乱の可能性を考慮した上でそのような同意を受け入れる裁量権を留保します。

  • 登録通知

登録官は今後、登録証を発行しなくなり、登録証は発行請求を受けたときのみ発行されるようになります。その代わり、登録官は、登録官の印紙を貼付した登録通知を発行するようになります。

  • 不使用取消

登録商標は、不使用を申請する前の3年の期間内に商標が使用されなかった場合、商標権者が不使用に対する申請に気付く前に使用を開始するべく対策が講じられた場合を除き、不使用を理由とする取り消しの対象となりやすくなります。また、登録所有権者は、不使用に対する申請の提出前の3ヶ月(現行法の下では1ヶ月)の期間内を除き、この3年の期間が終了した後の商標のいかなる使用にも依拠することができません。

不使用を理由として商標を取り消す場合の根拠も、商標が登録されている対象である製品または役務についての取引において、不作為の結果として一般名称となってしまった商標を取り消すことが出来るよう、拡大されました。商標は、その商標を使用することにより商品の性質、品質または地理的起源に関して一般社会に誤解を生じさせそうな場合にも取り消すことができようになりました。

  • 登録使用者の記録の廃止

商標の登録使用者を記録する現在の制度は廃止されます。ただし、実施許諾を記録することは(必須ではないですが)可能です。実施許諾は、書面であり、かつ許諾者もしくは許諾者の代理人による署名がある限り有効とみなされます。実施許諾が記録されている場合、何人も実施許諾を認識していたとみなされるため、実施許諾の記録は推奨されます。新法下では再実施許諾も明示的に認識されるようになります。

  • 担保権

新法では、担保権が認められ、登録商標は、他の個人財産または動産と同じように課金の対象となりえます。登録商標または登録商標におけるもしくは登録商標に基づくなんらかの権利に係る担保権の付与の登録のための申し出が行われるまで、担保権は、当該取引を知らずにこの登録商標における、もしくはこの登録商標に基づく係争利益を取得する者に対し、無効となります。

  • 有効性の推定

商標登録は、登録から5年(現行法下では7年)後に最終的であるとみなされ、あらゆる点で有効であるとみなされます。ただし、これは登録を不正に受けた場合、新法の第23条に違反する(登録に対する絶対的拒絶理由)場合、または商標がいずれかの法的手続の開始時に識別性がなかった場合を除きます。

  • 秘匿特権付き情報

新法は、また、商標代理人に対して、商標代理人と代理人として働くように任命し委任する者との間の通信時に用いられたあらゆる記録または文書を含めて、交わされたすべての情報は、法律顧問とそのクライアントとの間の情報として秘匿特権付き情報であるという義務も課します。

  • 結論および移行規定

新法の施行前に審査されなかった出願は、廃止法に基づいて登録を受けようとするものと考えられ、出願人は、登録官に申請することにより、商標の登録可能性を新法の規定に沿って判断してもらうよう求めることのできる選択肢を有します。しかし、出願が新法の開始時に未公開である場合、新法に基づく異議申立に関する規定が適用されます。

2019年商標法はまだ発効しておらず、官報中の公示により大臣の指定する日付で施行される予定です。なお、新法中の規定の施行は異なる部分により異なる日付が指定される可能性があります。

マレーシアでの商標保護について更に情報がご必要な場合は、弊所までお気兼ねなくお問い合わせください。

この記事は最初に2019年7月25日に英語で公開されました


弊所では一般的なお問い合わせや見積もりの際にご利用いただける日本語担当窓口を用意致しております。

日本語のお問い合わせを直接 JapaneseDesk@spruson.com 宛にお送りください。技術系のバックグラウンドを持つ日本語窓口担当者が迅速にお返事致します。

出願のご指示等につきましては、通常のメールアドレスに英語でお送りいただけると幸いです。

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